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2016/08/31 update

リオパラリンピック直前! 鹿沼由理恵選手・田中まい選手ロングインタビュー

スポーツライターである金子達仁氏によるリオパラリンピック自転車
トラックBクラス 日本代表の鹿沼由理恵選手(楽天ソシオビジネス)、
田中まい選手(日本競輪選手会・千葉支部所属)への インタビューをお届けします。

千葉競輪場で練習を重ねる鹿沼選手、田中選手。
二人の葛藤、絆、メダルへの熱い想いが率直に語られています。
世界へ羽ばたく二人へエールを送りましょう!!

 

ロングインタビュー(金子達仁氏)

健常者と視覚障害者がペアを組む自転車競技のタンデムは、
数あるパラリンピック競技の中でも、ちょっと異色の競技である。

パラリンピックの競技の多くは、オリンピックでも行われて
いるものがそのままの形で行われるか、サポート役として
健常者が関わることで行われる。
主役はあくまでもパラリンピアンであって、健常者ではない。

自転車競技のタンデムは違う。視覚障害を持つパラリンピアンと
同じぐらい、パイロットと呼ばれる健常者も主役なのである。

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リオのパラリンピックに出場する鹿沼由理恵と田中まいは、2013年から
ペアを組んで世界と戦ってきた。その戦闘力は世界でもトップクラスに
位置するとされ、リオでもメダルの獲得に大きな期待がかけられている。

視覚障害を持つ鹿沼と、ガールズケイリンの選手でもある田中のコンビは、
スポーツを美化する報道に慣れ親しんだ日本人の多くに、
麗しい友情物語をイメージさせるかもしれない。

友情が存在しないわけではない。だが、2人の間にはもっと強烈で、
もっと刺激的な関係がある。

ライバル関係である。

最初からそうだったわけではない。田中は言う。

「ペアを組んだ最初のころは、もっと息をあわせなきゃとか、
鹿沼さんのことを気づかわなきゃ、とか、そんなことばっかり考えてました。
でも、やってくうちにわかってきたんです。気を使い合って
ペダル踏んでるより、互いに自分のことだけ考えて、自分にできることを
とことんやった方がタイムが出るなって」

田中の後ろでペダルを漕ぐ鹿沼の想いは、より目的に対して純粋だった。

「わたしが押す、押すんだ。そう思って漕いでます。今日は踏めてないな、
とか、疲れてきたなとか、田中さんに感じさせたくないんです」

タンデムは、むろん敵と、そして時間と戦う競技である。
だが、外敵に立ち向かうマシンにエナジーをもたらすのは、
ペアを組む二人が散らす火花なのだ。

鹿沼田中ペア1

一時期、2人はペアを解消していた時期がある。田中にはガールズケイリンという
本職があり、鹿沼には他のパートナーを探す自由があった。
それでも、最終的には鹿沼が「わたしには田中さんしかいない」という結論に達し、
田中はその熱にほだされた。

「いろんな方、時には男性の方にもペアを組んでもらいましたけど、
前に進む感じというか、本番でのコース取りとか、田中さんとやってる時が
一番しっくり来るんです。練習では結構あれ?な時もあるんですけどね」

2015年、2人はトラックの世界選手権個人タンデムスプリントで3位に入った。
本番とも言うべきパラリンピックへ向けてライバルは着々と強化を進めていることが
予想されるが、リオでもメダル争いの有力候補にあげられることは間違いない。
日本でも、メダル獲得を期待して盛大な壮行会が行われた。

だが、十分な情報があるオリンピックでさえ、想定外の番狂わせは頻繁に起きる。
情報の乏しいパラリンピックの未来を占うことは、オリンピックよりもはるかに難しい。
はっきり言ってしまえば、パラリンピックのメダル有力候補は、
オリンピックのそれよりもはるかに危うい足元の上に立っている。

期待の大きさは、だから、重圧にもなる。

「やっぱり、不安はあります。自分たちなりに、どうやったらメダルに近づけるか、
可能性を高くできるか、一生懸命考えてるつもりですけど、なにせ前例がないことなので、
誰からも何も教えてもらえない。わたしたちのやってることが正しいのかどうかもわからない。
そこは、ちょっと怖いです」

開幕を直前にして田中が抱える不安は、おそらく、圧倒的多数のパラリンピアンが
抱くものでもあろう。大いなる期待と、同じぐらい大きな不安を抱き、世界中のアスリートたちは
「1月の川(リオ・デ・ジャネイロ)」に集う。誰が泣き、誰が笑うのか。
いまはまだ、誰にもわからない。

それでも、鹿沼はリオで笑うつもりである。

「6月、楽天ゴールデンイーグルスの試合で始球式をやらせていただいたんです。
前夜とかは目茶苦茶緊張したんですけど、いざ本番になったら、意外なぐらい大丈夫でした。
あの時、2万人を超えるお客さんの前で投げることができたんですから、きっと、
リオでも何とかなります」

パートナーが、そしてライバルがその気である以上、田中も負けるつもりはない。

「わたしはそこまでたくさんのお客さんの前でやった経験はないですけど、
たぶん、本番になると開き直れるタイプなんで、大丈夫かなと」

パラリンピックの自転車競技は、開会式翌日の9月8日から始まる。初めてのブラジル。
初めてのリオ。初めての選手村。どんな経験が待ち受けているのか。
自分たちがどんな心理状態になるのか。

いまはまだ、想像するしかない。

それでも、どれほど未知なる状況に直面しようとも、何とかなりそうな気が二人にはしている。

振り向けば、鹿沼がいる。
目の前には、田中がいる。

リオ・デ・ジャネイロで何が起ころうとも、それだけは、絶対に変わらないのだから。

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リオパラリンピック2016 鹿沼・田中ペア出場種目&スケジュール

9/9
▸1kmタイムトライアル 現地時間 AM10:00~(日本時間9/8 PM10:00~)
9/11
▸個人パーシュート予選 現地時間 AM10:00~(日本時間9/10 PM10:00~)
▸個人パーシュート決勝 現地時間 PM12:30~(日本時間9/11 AM0:30~)
9/15
▸ロードタイムトライアル 現地時間 PM1:30~(日本時間9/14 AM1:30~)
9/18
▸ロードレース 現地時間 PM1:05~(日本時間9/18 AM1:05~)
金子達仁氏

法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。
『スマッシュ』『サッカーダイジェスト』編集部勤務を経て、95年にフリーとなる。
スペインに移住した96年、サッカー・アトランタ五輪代表の肉声に迫った「叫び」「断層」が、
「Sports Graphic Number」に掲載され、その年の「ミズノ・スポーツライター賞」を受賞。
97年には「叫び」「断層」を収録した処女作「28年目のハーフタイム」が、一躍ベストセラーに。
フランスW杯アジア予選を追った第二作「決戦前夜」もベストセラーとなり、
稀代のノンフィクション作家として注目を浴びる。

2016年5月、世界初の試みとなる、スポーツの道具に特化した情報サイト、「KING GEAR」を立ち上げる。
http://king-gear.com/

 

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